この記事は最初に2025年5月7日に英語で公開されました
Fumakilla Ltd v The Registrar of Trademarks [2023] 11 MLJ 691の判例は、商標権の属地主義の性質を再確認しつつも、商標の登録性が現地の市場の状況において評価されなければならないことを強調しました。
この記事は、高等裁判所の判決を分析し、商品またはサービスを記述する外国語が、どのようにしたらマレーシアの商標法の下で依然として登録性を満たし得るのかを探ります。
背景
これは、廃止された1976年商標法(「当該法律」)下で、フマキラー株式会社(「原告」)が第3類の商品、具体的にはフレグランス配合物として出願した商標を拒絶した商標登録官(「登録官」)の決定に対する控訴でした。この控訴は、2019年商標法[1]が施行された後に行われましたが、登録官の決定は廃止された制度の下でなされたため、裁判所は、廃止された法律の条文を適用しました。
問題となっている商標 “
” は、「KAORI」という単語を含み、音訳である日本語の文字「かおり」(ka-o-riと発音)をその真下に位置付けていました(「当該商標」)。この言葉は、日本語で「匂い」または「フレグランス」を意味します。登録官は、当該商標は、当該法律下での登録性を少なくとも1つ満たすという要件に合致しないので、当該商標は登録できないという理由で出願を拒絶しました。
控訴の理由
裁判所が審理した問題は、以下の点です。
- 当該商標が登録性の要件を満たしていなかったという登録官の解釈は法的に誤りであったか否か、および
- 当該商標が複数の外国の管轄において既に登録されているということを、登録官が考慮しなかったか、または十分に考慮しなかったことが法的に誤りであったか否か。
登録官の拒絶理由
登録官は、「KAORI」という単語および付随する日本語の文字の両方が既知の意味を有しているため、当該商標は発明された単語ではないと判断しました。その意味から、日本語が堪能であるかまたは日本語を理解できるマレーシア人は、当該商標と登録された商品の特徴とを容易に関連付けることができるとしました。
この根拠に基づき、当該商標は、記述的であり、識別性がないと判断され、登録性がないとみなされました。
高等裁判所の判決
高等裁判所は、登録官が、原告の出願を拒絶する際に法的に誤りがあったと判断し、登録官の決定を取り消し、当該商標を登録するように命じました。
第1に、当該商標が、外国語の単語および日本語の文字の独特な組み合わせであり、地元の辞書では見つけられず、かつ一般的にマレーシアでは理解されていないことから、当該商標は、当該法律の第10条(1)(c)の下では、発明された単語として適格であると、裁判所は判断しました。証拠として、「KAORI」は、英語の辞書にもマレー語の辞書にも掲載されていないことを示し、付随する日本語の文字と一緒になった「KAORI」という単語が周知である証拠や、または一般のマレーシア人が、それが日本語で何を意味するかを理解している証拠はないとしました。裁判所はさらに、日本語の文字と対になっている「KAORI」という単語によって、当該単語の意味を理解する一般のマレーシア人の確率は減少すると言及しました。
裁判所はまた、登録官が結論を導くにあたり、外国語が他の言語で意味を持つという理由だけで、登録を一律に排除していない判例を都合よく引用したことも、法的に誤りであったと判断しました。
第2に、当該商標が、商品の特徴または品質に対する直接的な言及を有さないため、当該法律の第10条(1)(d)を満たすと裁判所は認めました。当該商標の単語の意味をマレーシア人が一般的に理解しておらず、当該商標について考えたり、それについて質問したりと立ち止まる必要があった場合、当該商標には、登録される商品の特徴または品質に対する直接的な言及を有さないとしました。
第3に、当該商標は、当該法律の第10条(1)(e)の下では、識別性があると判断されました。「KAORI」、日本語の文字、またはそれらの組み合わせを使用したり、それを使用したいと希望する他の商人がいるという証拠はないとしました。マレーシアの公衆は一般的に日本語は話さず、また理解もされていないので、不適切な動機がない限り、取引において同じ商標を使用しようとする他の商人がいる可能性は低いとしました。
加えて、外国での商標登録に関する問題について、裁判所は、そのような登録に関連性はあるとする一方、商標権は属地主義であるため、外国での登録は拘束力を持たないことを明確にしました。したがって、登録官が他の管轄で用いられたアプローチを採用しなかったことによる法律上の誤りはなかったとしました。
比較分析:Oishi判例
登録官が引用したOishi Group Public Company Limited v Liwayway Marketing Corporation [2014] MLJU 1154; [2015] 2 CLJ 1121(「Oishi判例」)は、注目に値します。この判例では、「OISHI」という単語(日本語で「美味しい」を意味します)が、商品、つまり、食品および飲料の特徴または品質を直接的に言及しているため、登録要件を満たしていないと判断されました。
Oishi判例において、裁判所は、日本の文化、特にその食文化という側面は国際的に広く知られており、マレーシアの一般公衆は、食料品において「OISHI」が「よい味(good taste)」を意味することを認識していたと判断しました。
しかしながら、裁判所は、日本料理の文化的な影響力の高さから、多くのマレーシア人が実際に「OISHI」の意味に馴染みがある一方、当該商標に関しては、フレグランスまたは匂いとして同じように馴染みがある証拠はないと指摘し、本件とOishi判例を区別しました。そのため、Oishi判例における理由付けを、そのまま適用することはできないとしました。
2019年商標法下での出願
裁判所は、廃止された法律を適用しましたが、議論された原則は、依然として適用可能であり、2019年商標法の下で、登録商標における外国語の単語の登録可能性についての指針を示していると言えます。
要点
この判例により、商標における外国語の単語は、それが単に外国語において意味を有するというだけで、拒絶されるべきではないということを再確認することになりました。決め手となったのは、その意味が現地の環境において、広く認識されているか、または理解されているか否かという点です。このことは、ブランドのオーナーに対して、商標を作成または保護する際、特に外国語が含まれている場合に、法的な要件(すなわち、登録性要件)だけでなく、現地の消費者の認知も考慮することが重要であることを強調しています。
[1] 2019年商標法における重要な変更点の要旨については、「マレーシアの新しい2019年商標法‐新たな夜明け」と題し、弊所ウェブサイトで2020年1月8日に公開された弊所記事をご参照ください。https://stage-v2.spruson.com/マレーシアの新しい2019年商標法-新たなる夜明け/ からアクセス可能です。
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