この記事は最初に2025年9月18日に英語で公開されました

Aristocrat Technologies Australia Pty Ltd v Commissioner of Patents [2025] FCAFC 131

主要ポイント

  • オーストラリア連邦控訴裁判所(Full Federal Court)は、Aristocrat Technologies Australia Pty Ltd(以下「アリストクラット」)による一連の控訴の最新判決を下しました。本件は、オーストラリア法におけるコンピューター実装発明(Computer-Implemented Inventions, CII)の特許適格性を巡るものです。
  • 本件で問題となった特許は、「フィーチャーゲーム」を作動させることができ、プレイヤーインターフェース上に表示される「設定可能なシンボル(configurable symbols)」を参照して賞品が割り当てられるという特徴を持つ電子ゲーミングマシン(EGM)に関するものです。
  • 2022年8月、オーストラリア高等裁判所は、アリストクラットの最も広範なクレームが特許適格性を有する対象に該当するかどうかについて、裁判官の意見が2対2に分かれました。このため、拘束力のある判例は成立しませんでした。
  • 今回、アリストクラットのその他のクレームについて判断した連邦控訴裁判所は、アリストクラットのEGMを特許保護の対象とみなすべきとした高等裁判所判事らの立場を採用しました。
  • この判決は、特許出願人および特許権者にとって好ましいものといえます。ただし、本判決がさらに高等裁判所へ上告されるかどうかは、今後の動向を注視する必要があります。

アリストクラット特許の歩み

本訴訟は、アリストクラットが保有する4件の革新特許に関するものです。これらの特許で保護されている装置は、従来の電子ゲーミングマシン(EGM)と同様に、統合ハードウェアおよびソフトウェアで構成されるゲームコントローラーと、ビデオディスプレイ、スピーカー、支払いの入出金手段、プレイ操作用ボタンなどを備えたプレイヤーインターフェースから成ります。

ただし、従来のEGMと異なり、アリストクラットの装置は、特定の条件下で「フィーチャーゲーム」が作動されるようにプログラムされています。このフィーチャーゲーム中には、プレイヤーインターフェース上に新たな「設定可能なシンボル(configurable symbols)」が表示され、プレイヤーに追加の賞品獲得の機会が提供されます。

この訴訟は長く複雑な経緯をたどっており、その詳細は当所の以前の報告に示されています。以下に要約します:

  • 2018年7月:特許庁長官(Commissioner of Patents)は、アリストクラットの特許出願はいずれも特許適格性を有する対象に該当せず、汎用的なコンピュータ装置上に実装された抽象的なアイデア(ゲームルール)に過ぎないとして拒絶しました。
  • 2020年6月:アリストクラットが連邦裁判所に控訴し、Burley判事は、発明は抽象的なアイデアではなく、実用的かつ有用な結果を生じる特定の構成を有する機械であるとして特許適格性を有すと判断しました。
  • 2021年11月:しかし、このBurley判事の判決は連邦控訴裁判所への控訴で覆されました。同裁判所の多数意見は、「発明はコンピュータ実装発明か? そうであれば、コンピュータ技術における進歩を含むか?」という二段階テストを適用し、前者には「はい」、後者には「いいえ」と回答して、特許不適格と結論付けました。
  • 2022年6月:アリストクラットはオーストラリア高等裁判所(High Court)に「最後」の上告をしましたが、6名の裁判官による審理の結果、アリストクラットの最も広範なクレームの有効性について2分しました。
  • 高等裁判所では、Kiefel長官、Gageler判事、Keane判事が、アリストクラットの発明をコンピュータ技術への貢献を伴わない抽象的なアイデアとみなし、特許不適格と判断しました。これに対し、Gordon判事、Edelman判事、Steward判事は、発明を新しいフィーチャーゲームを備えた改良EGMと捉え、人工的な状況を創出し、有用な結果を生むものとして特許適格性を有すると判断しました。
  • 適用法令上、この高等裁判所の3対3の分裂判決には拘束力がなく、事件は差戻しとなりました。その結果、Burley判事は前回の控訴裁判所判決に拘束され、残るクレームも特許不適格と判断せざるを得ませんでした。これに対する(以前とは違う)連邦控訴裁判所への控訴が、今回の最新判決の契機となっています。

CII特許適格性に希望をもたらす新たなアリストクラット判決

今回の連邦控訴裁判所は、以前の多数意見で採用された二段階テストが高等裁判所の6名全員から批判されていたことを踏まえ、そのアプローチを採用すべき理由はないと判断しました。

これにより、アリストクラットの残るクレームの特許適格性を実質的な内容に基づいて検討することが可能となり、連邦控訴裁判所は、アリストクラットの発明を特許適格性を有すると判断した高等裁判所判事(Gordon、Edelman、Steward)の理論を明確に支持しました。連邦控訴裁判所はその理論を採用し、アリストクラットの残る全てのクレームが特許適格な対象に向けられていると認定して、アリストクラットの控訴を認容しました。

この連邦控訴裁判所の判決の中心的論点は、アリストクラットの革新特許に開示・クレームされた発明をどのように特徴づけるか(characterisation)という点にありました。この点(つまりコンピューター実装発明を正しく特徴づける方法)こそが、高等裁判所における2つの見解の相違の核心でもありました。

高等裁判所のKiefel 長官、Gageler、Keane各判事は、実装方法自体が特許性を有さない限り、抽象的なアイデア(この場合ゲームルール)をコンピュータ装置(この場合EGM)で実装しただけでは特許適格性はないとました。その結果、各判事はフィーチャーゲームのルールを除けいた場合、EGMの構成要素には「ゲームの電子化に関する一般的知識を超える点がある」か検討しました。それがそうではないと判断し、クレームされた対象は要件である発明性を欠くと結論づけました。

これに対し、Gordon、Edelman、Steward各判事は、クレームのすべての要素(非発明的な要素を含む)を考慮し、発明が単なる抽象的アイデアの操作にとどまる(特許不適格である)のか(、あるいは抽象的アイデアをコンピュータで実装して人工的な状況と有用な結果を生じさせる(特許適格性を有する)のか(を問うべきとしました。

アリストクラットの発明が後者に該当すると判断し、彼らは、発明は単なる新しいゲームルールではなく、設定可能なシンボルをの使用を伴うプレイヤーインターフェースとゲームコントローラーの相互作用による実装に関するものであると指摘しました。各判事はこれが物理的な歯車やリールではなく、ハードウェア・ソフトウェア・デジタル画像で実現されていることは本質的ではないと述べました。

この3判事の見解は拘束力を持たない(高等裁判所での3対3の分裂判決のため)ものの、今回の連邦控訴裁判所の全会一致の判断で採用・支持されたことにより、特許庁長官および連邦裁判所のそれぞれの判事を拘束する先例となりました。これは、オーストラリアでコンピューター実装発明の特許保護を求める者にとって極めて前向きな判断といえます。

ただし、特許庁長官が今回の連邦控訴裁判所の判決に対して高等裁判所への上告許可を求めるかは未定であり、今後の動向は、同庁が本判決が類似案件における特許審査の指針として十分明確かどうかと判断するかに左右されるでしょう。 Spruson & Fergusonは、今後も本件の進展を注視し、最新情報をご報告していきます。

CII発明の保護サポート

コンピューター実装発明の分野におけるイノベーションを有する場合、オーストラリアの特許法はグレーゾーンが多いといえます。

Spruson & Fergusonの弁理士チームおよび弁護士チームはこの分野に精通しており、特許保護に向けた助言・出願サポートが可能です。

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